[To Recycle] 再生可能なダンボールで家具、知育グッズを開発・販売

お母さんの声から生まれました
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ストーリー

幼児教育の一環としてジュニアデスクチェアを購入した父親


「ちょっといいかな?」ゆかりさんが僕の顔を覗き込むように聞いてくる。またやらかしたかと不安になったけど思い当たる節がない。先月は続けてミスをしてしまったけど、今月の乙女座は絶好調だというファション雑誌の星占いどおり、呼び出されるような失敗はしていないはずだ。誇れるような大きな成果もないけれど。

会議室に入ると同時に「ちゃんと美樹と会話してる?」とただでさえ細い目をさらに細くして詰め寄ってくる。すみません、ドキッとするから少し離れてくださいと口に出しかけたけど、どうやら冗談が通じるような状況ではなさそうだ。


わが家のトップシークレットがゆかりさんにだだ漏れだということは理解した。妻の美樹はゆかりさんの幼なじみ。そして僕と美樹は絶賛大ゲンカ中。僕にだって言い分はあるけど、間違いなく一方的な情報だけが伝わっている模様。ここは反論するのは虎の尻尾を踏むようなもの。君子危うきになんとかと言うではないか。

「あなたたちの子育てについて私がどうこう言うつもりはないけど」という前置きはなんだったのかと首を傾げたくなるような説教が延々と続いている。美樹は幼児教育に熱心で、人生のすべてを息子に捧げていると言っても過言ではない。僕はといえば子どもは勝手に育つというスタンス。子育て論がかみ合わないことがケンカの原因だ。


僕がいくら「そこまでしなくてもいいんじゃないか」と言っても聞き入れてくれない。そして幼児教育にはお金がかかるからと僕の小遣いはどんどんと削られていく。これは由々しき問題だ。

ゆかりさんの独演により想定外の残業をすることになってしまった。怒られたうえに残業までして踏んだり蹴ったりだ。「イライラしてるなぁ」と向かいの席の山田さんが茶々を入れてくる。40代後半で誰よりも仕事ができるのにいまだ平社員という、謎多き先輩だ。

「子どもって自分で育ちますよね?」思わず山田さんに聞いてしまった。「そうだと言えばそうだけど、違うと言えば違うかな」なんとも曖昧な答えが返ってきた。「どっちなんですか」つい強い口調で問いただしてしまった。「そうだね、はっきりしてるのは、子育てはで育つのは子供だけじゃなくて、家族みんなが育たなくてはいけないということ」想定外の回答がきた。


帰りの電車に揺られながら山田さんの言葉を何度も繰り返し呟いていた。目に見えて日々成長を続ける息子。それに対していまの僕はどうだ。いつから成長することを諦めてたのだろう。なんでいまのままの自分でいいと思っていたのだろう。少なくともいまの僕は自分で勝手には育ってはいない。

子どもを育てるというのは自分を育てること、家族を育てること。子育てを通じて家族はひとつになっていく。きっと山田さんはそう伝えたかったのだろう。正直ちょっと山田さんを見なおした。

でもいまさら幼児教育頑張ろうなんて言うのは美樹の軍門に下るようで気持ちが良くない。男の小さなプライドといえばそれまでだけど、その小さなプライドがあるから頑張って働けているのだ。


そう思っているとスマホに山田さんからのメッセージが届いた。表題は「買え」、本文にはURLだけが書いてある。URLをクリックしてみると、ダンボールで作られたという可愛らしいジュニアデスクとチェアがそこにあった。惚れていいですか山田さん。僕はすかさずネットショップからダンボールのジュニアデスク・チェアを購入した。

数日後、仕事から帰るとジュニアデスク・チェアが届いていた。不審な目で見る美樹の視線が痛かったけど気にしないふりをして組み立てを開始した。 二人の間にある張りつめた空気を打ち破るべくジュニアデスクを組み立てながら言ってみた。「小さいうちから机とイスで育つと小学校に入ってからも落ち着いて勉強できるようになるんだってね」もちろん山田さんの受け売りだ。


「どうしたの急に?」ごもっともなご質問。もう意地もプライドもなく思っていることをそのままぶつけてみることにした。

「なんとなくだけどわかってきたんだ。子育ては家族みんなで育っていかなきゃいけないってこと。僕も一緒に育ちたいから」そう言った僕の額に美樹が手を当ててきた。失礼なやつめ、熱などない。そう言いかけた口を美樹の唇でふさがれた。このとき僕は一生山田さんについて行こうと心に誓った。もちろん子育てを通じて家族をひとつにしていくことも誓ったのは言うまでもない。

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